Discography
Album
- 別世界への招待状(ver.0)
- METRO
- Mr.Bad Trip
- 時の亡命者
- 月下美人
- 黒い犬
- トリックスターの憂鬱
- MONDO MOVIE
- 青空
- 朝日を待ちながら
- 傀儡使いの街
- ドッペルゲンガー
- 天使達のパ・ド・ドゥ
- 別世界への招待
デビュー30周年を迎えたDER ZIBETが2015年11月25日にニューアルバム『別世界』をリリースした。
アニヴァーサリーイヤーを意識することなく、マニアックでアンダーグラウンドなものを作りたいという共通認識のもとに制作されたというアルバムは期せずして1985年のデビュー当時からDER ZIBETが持っていた異色でぶっ飛んだロック体質を浮き彫りにする作品に仕上がった。
アルバムのタイトル『別世界』は収録曲の「MONDO MOVIE」にも使われている"モンド"という言葉に触発されて付けられた。ちなみに"MONDO MOVIE"とは奇妙でエロティックで見たことも聞いたこともない独特の世界観を持つ映画のことであり、そこから発展して"MONDO MUSIC"というカルチャーが生まれている。
オルゴールのミステリアスな旋律が響くSE「別世界への招待状ver.0」を受け取ったら、そこからは未知の扉を開け続けていく旅の始まり。いきなり地下世界へと突き落とされる「METRO」では闇から闇へと蛇のようにのたうつ地下鉄が不気味なショーを繰り広げ、唸りをあげるサウンドは生き物のようだ。次なる扉はエキゾティックで退廃的なダンスロックナンバー「Mr.Bad Trip」。多重人格の詩人が鏡と会話し、トップレスのヴィーナスが水パイプを手渡す狂ったパーティ会場に足を踏み入れることになる。シャンソンとロックの融合とも言える「時の亡命者」で姿を表すのは在りし日のヨーロッパの亡命者の亡霊か? ここが何処でいつの時代なのか、幻想なのか現実なのか、まったく境目がわからない「別世界」へとグイグイひきこまれるのが本作である。
真夜中の十字路に突如、あらわれる黒い犬が3Dで迫ってきそうなゴシック色の強いナンバー「黒い犬」、別世界の出口のように朝もやのパレードが夜の終わりを告げる壮大で美しいラストナンバー「天使達のパ・ド・ドゥ」、エンドロール的な「別世界への招待状」まで全14曲、一瞬たりとも飽きさせない。
土屋昌巳率いるKA.F.KAのヴォーカリストとしても活躍中のISSAYの詩人としての才能が遺憾なく発揮されたアルバムでもあり、HIKARUのギターワーク、1曲、1曲の世界観をみごとに描写する映像的なサウンドアレンジはDER ZIBETの真骨頂としか言いようがない。
ジャケットを手掛けているのはGACKTの作品などを担当してきたMISAKI氏で、「別世界を旅している黒い犬が次にたどり着いた世界」をイメージしたというアートワークもまた想像力をかきたててくれる。
デビュー30周年を迎えたDER ZIBETが2015年の終わりに生みだしたのは、音楽という名の転送装置だった。数多くのクリエイターに影響を与えた圧倒的なオリジナリティーは健在である。
■ISSAYコメント
「デビュー当時からDER ZIBETはマニアックだと言われていたけれど、そもそも全員が新しいもの好き。世の中にまだ定着していない手法をいち早くメジャーシーンでやってきたから、そう定義されていたのかもしれないけれど、あの頃の基本姿勢に僕は立ち返りたかった。2015年にDER ZIBETが最も自分たちらしいアプローチをしたアルバムになったと思います」
■HIKARUコメント
「新しい作品を作りたいという衝動から生まれたアルバム。マニアックがテーマにあったとは言え、出来上がったアルバムを聴いて改めて思ったのはメロディがないような実験的な音楽ではなく、やっぱり自分はサビで広がるポップなメロディが好きなんだということ。バンドマジックが散りばめられていて、結果、ショートストーリーの詰まった映画を1本見るようなアルバムになったんじゃないかと感じています」
text by 山本 弘子